2012年8月8日(木)、第10回教師学事例研究会が金沢工業大学大学院 東京虎ノ門キャンパス(東京都港区)で開催されました。全国から74名の参加があり、会場は熱気に包まれました。(主催:親業訓練協会/教師学研究会)
教育とコミュニケーション力(りょく)
〜実践例を通して考える〜
午前中に3名の現役の小学校・中学校・高校の教員の方々による教育現場からの事例発表が行われました。引き続き、午後からはポスターセッションと昨年度も好評だった教師学ミニ体験コーナー、その後7つのテーマに分かれてグループセッションが開かれ、教師学の実践に向けて活発な意見交換がなされました。
また、教師学事例研究会が第10回を迎えた今年は、記念冊子として教師学実践事例集も参加者に配布されました。
*教育現場からの事例紹介*
中学校で
教師学が私の教師生活に与えてくれたもの
− 能動的な聞き方や、わたしメッセージを実践して効果を実感−
私立高等学校教諭
進藤 美紀さん
担任を嫌う、ある生徒とのトラブルが自分を見直すきっかけになり、そこで出会った教師学。問題を抱えた生徒との対応に能動的な聞き方やわたしメッセージを実践した事例を紹介。教師学で生徒への対応が変わるとともに、「自分自身」も大きく変化し、「トラブルが起きた時に、それはチャンスと考えることができるようになった」実感を報告。 (進藤美紀さんは教師学実践事例集にも高等学校の環境改善策を寄稿して下さいました。)
高校で
生徒のためのはずが、自分自身の成長に繋がった教師学
− 我慢しない、無理しない、健全な人間関係は、やはり聞くことが基本だった−
私立中高等学校教諭
浅井 麻由さん
学校は、生徒と教師の両方の欲求を満たす場所」という教師学の考えに出会って発想が転換し、教師として満たされるようになった自分の気持ちや良好になった生徒との関係を報告。生徒や自分自身に対する信頼感・肯定感のアップについて日々の実践事例とともに紹介。
小学校で
“学級崩壊”をきっかけに始まった教師学
− 学級崩壊で、これまでの自分が崩壊。
立ち上がるきっかけは教師学だった!−
公立小学校教諭
森田 真好さん
10年前に経験した「学級崩壊」をきっかけに知り合った教師学のスキルの実践・経過を年度を追って報告。生徒との関係が良好に変化することで、いったん失われかけた教師としてのエネルギーが回復していく様子や生徒たちと信頼感を深めていく過程を紹介。
*ポスターセッション*
ポスターセッションでは各地での「教師学」や「親業」、「ユース・コミュニケーション」の活動の実践例をポスターで発表。多くの方が熱心に見ておられました。また、展示者との間での活発な質疑応答も見られました。
2012年 九州地区 教師学研究会だより
出された話題と その「教師学的」展開土岐 圭子
17回目となった例年の一泊研修は高野利雄教師学インストラクターの講演とワークショップを開催。ワークショップで出された「特別支援学校のスクールバス添乗員として困ったこと」について、参加者みんなでその問題点を洗い出し、「教師学的」解決策へと展開した内容を報告。
「卒業アルバム仕上げるから学校休む!」
〜その時、子どもが何をしたいのか共に考える〜式場 敬子
子どもが自分で物事を解決していくために、大人ができる援助として、教師学の手法の一つ「プロセスコンサルタント」を紹介。まず、大人が子どもの本当の欲求をつかむ手助けをすることで、解決のためにどんなことができるのか可能性が広がり、子どもが自ら考えていく足がかりとなると発表。
信頼関係を基盤とした保育をめざして今井 順子
日々の保育のトラブルの事例を写真とイラストを交えて紹介。教師学で子どもと向きあうことで、子どもの主体性が育まれていくことを実感し、職員みんなで教師学の学びを共有しようと園内研修を行っている。学びはじめたばかりの職員集団の気づき、喜びなども報告。
特別支援教育に「教師学」をどう活かすか!飯田 伸
〜ゴードン・メソッドからのヒント〜土田 陽子
発達障害の子どもたちを乱暴だ、わがままだ、社会性や協調性が無いという前にどんな子どもたちなのだろうと知ることで、関わり方を工夫することができる。発達障害を持つ子どもの特徴や適切な対応・言葉がけをイラストとともに紹介。そして、その関わり方は、ゴードン・メソッドを使うとトラブルにならないで済むことが多いと発表。
「考えていたんだよ」―夢に向かって―
教師学で育つ「自分の人生を切り開く生徒」石田 睦子
教師学の手法であるプロセスコンサルタントで援助することにより、「相談室登校だった生徒が希望高校に合格、そして写真部で全国大会に出場する」、まさに生徒が自分で答えを見つけ、自らの力で人生を切り開いていった事例を紹介。能動的な聞き方とわたしメッセージを使い、生徒が自分自身との信頼、教師との信頼関係を築くことで、学習意欲が育つ。学校は「生徒ができないことをできるようになるところ」と言われているが、「できるようにサポートできる」のがプロセスコンサルタントであると発表。
発達に問題を抱える生徒が、自分自身を見つめる時
―教師学の効果的な関わりを求めて―溝木 京子
発達に問題を抱える生徒の対応をK子の事例を使って紹介。自閉的な傾向がみられるK子に対して教師学のスキルを使い対応していくと、K子が自分の問題と自分自身とに向き合えました。K子のマイペースに合わせることが、最善のフィードバックであると実感しました。やがて言葉が紡ぎ出され始め、行動にも変化が起きました。どんな人にも合わせられる教師学は、使いやすいので現場では不可欠であると報告。
学校現場で教師学を生かす
―事例紹介・高校生コミュニケーション・ワーク―園元 恭子
学校現場でよく見られる生徒の行動(遅刻・授業中の内職・部活動でのトラブル)に対して、教師学のスキル(能動的な聞き方・対決のわたしメッセージ・価値観に影響を与えるわたしメッセージなど)を使い、関わった事例と高校生の授業の一環として取り入れられたコミュニケーション・ワークの内容・写真・感想の紹介。
「コミュニケーションがもたらす新しい世界」
〜青少年が学ぶ〜青木 きよ子
青少年が「相手の話を聞く」「自分について語る」「対立の解消」という3つのコミュニケーションスキルを知り、半信半疑ながらも使ってみることで、自分と相手に対する「新しい」理解と気づきが生まれたことを事例とともに紹介。
ユース・コミュニケーション講座木村 哲
―学校での対立解消のためのワークショップ―青木 きよ子
ユース・コミュニケーション講座の内容を、受講中の横須賀学院の生徒の写真を交えながら紹介。生徒たち自身が学校生活の中で起こってくる対立を建設的に解消していくための具体的な方法を学ぶ。アプローチは学校での対立解消だが、生涯を通して他者との共存のための基礎となると紹介。
保育現場における関係の構築青木 きよ子
保育士を志す学生たちが教師学のコミュニケーションを学ぶことの意義は?
子どもたちにコミュニケーションの力を!
〜豊かな人間関係づくり〜親業訓練協会支援室
ユース・コミュニケーションの歩みと広がりを、ヒューマンリレーションニュースの記事を使って紹介。
*教師学ミニ体験コーナー*
昨年好評だったミニ体験コーナーは、ポスターセッションの時間内に今年は2回開催されました。教師学の用語の簡単な説明や、ロール・プレイが行われ、多くの参加者が体験しました。
*グループセッション*
7つのテーマの中から各自が関心の高いテーマに集い、意見、情報交換をしました。
話し合いに参加した方々の感想の一部をご紹介します。
「教師学は万能ではない」という言葉はガツン!と心に響きました。
そこに淡い幻想と期待を抱いていたなあと思いました。
ですが、日々のアプローチをいかに積み重ねていくか、そして広めるかを学ぶことができ、有意義な時間でした。(教員)
私は保護者という立場なのですが、教師の大変さ、難しさ、そして楽しさも知ることができました。とても良かったです。(主婦)
グループ12人全員が違う意見を持っていて、それを知れて良かったです。(高校生)
自分は発言しなかったにもかかわらず、自分の問題に1つのメドがついた。とても参考になった。
やはり、各グループのセッションのまとめの発表があるといいなと思った。他のグループの内容もちょっと知りたかった。(教員)
自由に発言でき、話しながら自分の考えが整理できた。
解決までにいかなくても、いろいろな方法があるということが見えてきた。(教員)
まとめを発表するということがなかったので自由に話すことができました。(教員)
どんな先生にめぐり会えたかによって、人生が変わると思います。
今日、参加していらっしゃる先生方の生徒になりたいなと思いました。
教師学が広がり、先生も生徒もラクになれるといいなと感じます。(主婦)
グループの力を感じました。安心して話せました。(パート)
小・中・高の教師、そしてインストラクターと、いろいろな立場の方の意見が出され、とても参考になった。
教師はひとりの人間として、気負わずに子どもと接することが大切だと思った。(教員)
*事例研究会全般についての感想の一部をご紹介します*
事例発表をもっと増やしていただければと思います。(幼稚園・保育園経営者)
能動的に聞くことの重要性を再確認することができました。(教員)
毎回、勉強になります。勉強し続けます。自分のできる事をやっていこうと思います。(保育士)
短い時間でしたが、充実した時間でした。職場のみんなが元気でいるためにも、実践し広めていきたいです。(保育士)
いろいろな方の話が聞けてよかったです。悩んでいることが共有できました。(小学校教員)
結果として、教員が元気になると感じた。(教員)
主婦(教師ではない)が参加できて良かった。教師学を義務づけてほしい。教育の中で義務づけられるように是非活動して頂きたい。教師も生徒も親も皆、学んで知っていれば、どんなに良いかと心から思います。(主婦)
一般参加の方の中に保護者の方が随分参加されていることに驚きました。教員と親とが同じように子どもと向き合えたら素敵ですね。(教員)
教師学についてお話を伺うのは初めてでしたので、耳慣れない用語もありましたが、即実践できそうなものも多く大変役に立ちました。(教員)
自分の実践はまだまだだと思った。これからも意識しながら続けようと思う。“学級崩壊”から立て直すまでの過程を聞き、教師学の力を感じた。(教員)
自己開示され実践を活かされることが人の心を動かすという気持ちを知りました。(教員)
現場の先生が必死に取り組んでいる姿が伝わってきて、良い刺激を受けることができました。(教員)