2013年8月5日(月)、第11回教師学事例研究会が金沢工業大学大学院 東京虎ノ門キャンパス(東京都港区)で開催された。全国各地の教師、学生、保護者など立場の違う方々(80余名)が一堂に会し、現場で活かす教師学について事例発表と、意見交換が終日熱心に行われた。(主催:親業訓練協会/教師学研究会)
教育とコミュニケーション力(りょく)
〜実践例を通して考える〜
今年のプログラムは、最初に教師学ミニレクチャー、続いて教育現場から2人の方の事例発表、昼休みはポスターセッション、午後再び残りの1名の方の事例発表が行われた。事例発表の後には、8つのテーマに分かれてグループセッションが開かれ、どのグループも教師学の実践に向けて率直な意見交換が活発に行われていた。
*教師学ミニレクチャー*
教師学上級インストラクターが、教師学の概念や用語の簡単な説明を行った。参加者が生徒役になるロールプレイも体験し、その後に続く事例発表が、よりわかりやすくなったと好評だった。
*教育現場からの事例紹介*
一人ひとりの思いがつながる 学級づくり
− 「一言カード」と「勝負なし法での学級会」で児童同士、担任と児童の心がつながる−
神奈川県公立小学校教諭
窪田 陽子さん
小学校4年生が毎日、「一言カード」にわたしメッセージを書き、担任が教師学のスキルを意識してコメントをつけることを続けたら・・・・子どもの視点が変化し、感情表現が豊かになったことを、実物と共に発表された。また、多数決を使わない話し合いの方法で、全員の納得する学級目標を決めた過程は、これが一人ひとりを大切にする学級運営だと感じた。
実践・介入的援助!先輩と後輩による喧嘩
− 生徒たちに対する情報のない中で居合わせた教師に何ができるか?−
私立中学・高等学校教諭
石渡 健児さん
中学3年の生徒Aが2年の生徒Bに馬乗りになって顔面を叩くという場面に遭遇。学んだ教師学の方法を実践しようと、強い意志をもって臨んだ体験を報告された。生徒とのやり取りが詳細に再現され、生徒A,Bが互いの心を開いて気持ちを理解し合う様子が、手に取るようにわかった。教師の適切な介在により、生徒が自ら問題解決できることを、確信した。
教師学で生徒の未来の扉を開く
− 教師学の方法を使ったことによる 生徒の行動の変化−
広島県公立中学校 生徒指導講師
石田 睦子さん
いじめで不登校になった生徒Aが、2年ぶりに勇気をもって始業式に出席。常に反抗的な態度だった生徒Bが、教師の言葉に耳を傾けた。教師が教師学での対応をすることで、生徒が「自分は愛されている」と実感し、生きる力が湧くということが、二つの事例を通して示された。教師学が、教育現場に広く浸透するようにとの熱い思いが伝わってきた。
*ポスターセッション*
例年は親子関係等に関する発表もあったが、今年は教師学に絞った内容となった。実践事例だけでなく講演会(いじめ等)の報告もあり、全6件のポスターセッションでは、その場で発表者と参加者との意見交換も盛んに行われていた。
「特別支援教育」に「教師学」をどう活かすか!飯田 伸
〜ゴードン・メソッドからのヒント〜土田 陽子
「教師学」から学んだことを教育現場で実践することで、「発達障害系」ではないかと思われる子どもたちとの間でトラブルを減らせる場面が沢山あったことの報告。「教師学」を実践していくことは、全ての子どもたちに有効で、暖かい学級経営に繋がっていくと発表。
広がる魔法のコミュニケーション
〜生徒へ・同僚に・保護者に〜園元 恭子
教師学のスキルを身につけて18年。生徒が生きる力をつけるために、教師自身(発表者)がゴードン・メソッドを教育現場で実践した事例(能動的な聞き方、介入的援助、第三法)と保護者や同僚などの生徒をとりまく人的環境へ働きかけた内容と、生徒自身の実践事例を具体的に報告。(実践の詳細内容はヒューマンリレーションニュース2013年夏号に掲載)
教師学研究会主催 緊急講演会レポート
〜2月17日開催の教師学研究会主催 緊急特別企画〜
久保 まゆみ
「今こそ・いじめ・体罰をこえる! ゴードン・メソッドに学ぶ教師と生徒の出会い」について、講演会当日の写真とアンケート結果の発表。アンケートについて94%の参加者から好評を得られたことと、参加者の具体的な感想を報告。同内容で3月に行われた九州、10月開催予定の名古屋の紹介もあった。
心通い合う双方向のコミュニケーション
〜犬山市立犬山中学校の取りくみ〜松尾 千景
犬山中学学校保健委員会で行った思春期セミナーの報告。近年、家族、地域、友人間でのコミュニケーションが希薄となっている中学生に対して行われた、教師による親子会話劇と、ゴードン博士のコミュニケーションスキルの講演会。セミナー前後にアンケートを行い、生徒の悩みを把握した上で、セミナーで何を学んだかについて発表。
燕市児童研修館「子どもの森」からの報告関崎 智弥
子育て支援の仕事の一つ「サークル支援」についての報告。障害を持つ子も持たない子も一緒に活動できるサークルを立ち上げるための話し合いに「勝負なし法」を使った事例を紹介し、保護者達も施設側も無理なく、「質の高い支援」をするための話し合いができ、その後のサークル運営も順調であると報告。また、親業を受講した保護者達が様々な場面で効果的な対応をしていることの紹介。
2013年 九州地区 教師学研究会 主催講演会
―体罰・いじめ・自殺は防げるか?! in 福岡―土岐 圭子
「今こそ、いじめ・体罰をこえる!心の通い合えるコミュニケーション力を!!」ゴードン・メソッドをアピールするため、東京に続く福岡での講演会(参加者70名。高校生2名を含む)の報告。参加者から「強制力による体罰やいじめの抑制にはもう限界が来ている。よりよいコミュニケーションを社会全体でできるようになりたいと思った」などの感想があったと発表。
*グループセッション*
8つのテーマの中から各自が関心の高いテーマに集い、意見、情報交換をしました。
話し合いに参加した方々の感想の一部をご紹介します。
「保護者への対応」に参加。子どもをよくしたいと思っている気持ちは、親も教師も同じであり、それぞれの立場で各々がわたしメッセージを伝えることの大切さも実感しました。何か問題が起こってからでなく、普段からの関係作りに努めて行こうと思います。(教員)
様々な立場の方からお話を聴くことができたので、今後に活かしていきたいと思います。(小学校教諭)
グループの方々の体験を聞くことによって、参考になったり、気づくことが沢山ありました。能動的な聞き方をトレーニングしていきたいです。(教員)
とても話しやすい雰囲気でよかった。(子育て支援センター・パート)
様々なヒントを頂きました。早速実践したいと思います。(中学高校教員)
いじめと不登校は似ている部分もあるし、似ていない部分もあり、話をまとめるのが難しいものを、司会の方が上手にまとめて下さった。(家庭調査官)
とても勉強になりました。ゴードン・メソッドが一人でも多くの人に広まることを願います。(障害者就労支援員)
色々な意見、考えを聞くことで、気づきや確認ができて参考になった。(幼稚園教諭)
時間もたっぷりあって、いろいろ話せたと思います。テーマも良かったです。(公立小学校相談員)
グループセッションの場での気づきがあり、今後の活動の目標の1つとなりました。
いろんな立場の方の話が聞けてよかった。安心して自己開示のできる場があり、本当の思いにふれて、感動しました。心の触れ合うときって本当にステキだと思いました。(インストラクター)
*事例研究会全般についての感想の一部をご紹介します*
発表もあり、グループの話し合いもあり、盛りだくさんの内容で大満足です。また来年楽しみであるとともに来年は友人教師とともに参加したいです。(主婦)
実際、学習していることの事例を聞き、また生の声で話し合いができたことが有意義でした。(幼稚園教諭)
内容の濃い研修でした。ありがとうございました。
新しい考え方を獲得できてよかった。
多くの方とお会いできて、年代の異なる様々な方々のお話が伺えたのが良かったです。立場の違う人とまた是非意見交換もしたいと思いました。(中学高校教諭)
ゴードン・メソッドを実践することで色んな場面での解決の糸口が見られたので大変参考になりました。(教員)
介入的援助の事例はとても参考になりました。実践していきたいと思います。(教員)
世界が広がりました。ありがとうございます。これからは活かしていきたいです。(学生)
教育現場での生の意見が聞けて良かったです。(保育士)
進行が明確で落ちつけた。小さなことで言うと、発表者3名が終了したあとで、全員の質問タイムまたは、発表者からの追加の発信や感想などがあっても良かったかも、結果的にはそうなりました。
今の教育界に教師学がいかに大切かを強く感じ、発信している姿に感動しました。