2024年教師学事例研究会のご報告

(教育とコミュニケーション力(りょく))

自己表現し合える関係が
子どもの成長を育む

昨年に引き続きオンライン形式で、8月4日(日)9時〜12時に実施しました。
日本各地から約50名の方のご参加がありました。
教師学講座を受講済みの参加者が多い中、「教師学」を初めて知った、この事例研究会に初めて参加したという方もいました。初参加者の中には、事例研究会後さっそく教師学の講座に申し込まれた方もいました。
3名の発表者からは、小学校の不登校事例、中学受験の生徒と共に不安や心配を受け止めながら学習の計画を立てる事例、中学生の友達との関わりに介入する事例など、現場の様子がありありと浮かぶ実践報告でした。
参加者は各発表後にグループに分かれてディスカッションを行いました。限られた時間ではありましたが、発表内容に対する質問や感想などが出され、又、お互いにディスカッションする中で新たな気づきがあるという声もあり、それぞれが有意義な時間を持った事例研究会だったことが窺えました。

< 実践者の事例発表 >

I.金子 幸恵(仮名)さん(公立中学校教諭)
●不登校児童の母親の心配と、どうしたらいいかを悩んでいる気持ちを丁寧に聞いていくことで、母親も前向きに考えようとする姿勢になってくる事例
●読書が好きな不登校児には、もしかしたら見え方に問題があるかもしれないことに気がついて、母親に専門的な診察を検討する提案に至る事例
*不登校になる「きっかけ要因」(教師の対応、成績、進路、部活など)が教師、本人、親の三者間に認識の差があることを示すグラフがとても参考になりました。
もしゴードンメソッドを知らなかったらこんな会話になっていたかもしれないというシュミレーションと比較した発表も興味深かったです。

II.小川 かおりさん(中学受験予備校職員)
●なんでも完璧ではないと不安な生徒に対して、その不安を解決するためにできる事を一緒に考える対応をした事例
時間をかけて一緒に考えていく中で生徒が自ら考え表情も変わってきた報告。
*プロセスコンサルタントを使う中でも、受動的な聞き方、能動的な聞き方、環境改善などいろいろなゴードンメソッドの実践が紹介され、他の先生との連携などもあり、実際の現場そのものでの丁寧な取り組みが参加者への感動とこれからの実践への勇気を与えてくれました。

III.古谷 香代子さん(公立小中一貫校教諭)
●三年前にも事例発表をされており、その時は三者面談で親子に介入的援助で対応した事例を紹介してくれました。その生徒はその後に受験する学校を決めて、第1志望校へ受かったという事後報告から始まりました。
●仲たがいをしている二人の男子生徒たちへ能動的な聞き方で対応し、二人に介入的援助で話し合う時間を取った事例。その後の三者面談での生徒の変化の報告。
●授業中にシャープペンを取り合う二人の男子生徒へ、教師の正直な自己表現を伝えた事例。
*「ゴードンメソッドを使って援助はしたけど、生徒たちは自分の力で成長していく」という発表者の言葉そのものの実践が伝わってきました。責めることなく教師もまっすぐに気持ちを伝えていくことは、温かい迫力を感じました。

< 参加者の声(アンケートより一部抜粋) >

<教師学事例研究会へのご参加は?>
参加者の声
<今回の「教師学事例研究会」はいかがでしたか?>
参加者の声

やはり常にゴードンメソッドに触れ続けていくことが大切だと思いました。

教育の現場で起こりえる身近な問題を、力まずに解決されているご様子に勇気をいただきました。

グループディスカッションで他の方とお話しすることで、より学びが深まり、幸せな時間でした。能動的な聞き方で聞く場面と、提案や専門家として求められるアドバイスをするタイミングについて、勉強になりました。言葉や技法、手法よりも根底にある思いを理解し伝えることが大切であることを改めて実感しました。

現場での実践事例をお聞きして、参考になりました。自己表現し合える関係は信頼関係の上に成り立つことだと思うので、そこを大切にしながら現場に立ちたいと思います。

講座を受け続けることや、このような学びの場所に積極的に参加することで、学びの原点を確認したり、ブラッシュアップし続けたりしていくことが本当に大切だと、改めて感じた今日の教師学事例研究会でした。そして、ゴードンメソッドの実践を続けていく事の大切さと可能性の大きさも感じた今日の時間でした。

子どもたちの周りの大人がゴードンメソッドを実践する姿は、人としてのモデルである。自己表現するためには、自分の生き方を明確にすることが必要だと感じました。

金子さん…「その子が見えている世界に寄り添う。時間がかかるからこそ、たくさんの協力者が必要である」と言われたこと。子どもを信じる姿勢が力強かったです。
小川さん…「どうしよう」に対して「どうにかしたいと思っているのね」と能動的な聞き方をされたこと。(「どうしていいかわからないのね」ではなく)振り返りまでに4か月かけていたこと。子どもを信じ切る気持ちを感じました。
古谷さん…「援助しただけ。(子どもは)自分の力で成長したと感じることができる」と言われたこと。自信をもって職務に就いていらっしゃることが清々しかったです。

実行委員長からの「教師学は人権と人格の相互尊重」との言葉に感銘をうけました。そして、各3名の先生方の発表を伺い、人権と人格の尊重が実現されていると実感し感動しました。今、病まれたり、辞めていかれたりする教員が多いと聞きます。教師学により「教師という職業の楽しさ」を感じられる先生方が増えることを心から願います。

教師学をまだ受講していないのですが、先生方が教室で日々子どもたちや保護者とゴードンメソッドで関わっていき、様々な利点がたくさんあることを実感しました。私は保護者の立場と支援員という立場ではありましたが、先生方が実践してくださることで、波及効果はとても大きいのではと感じました。また、一緒に考えていきましょうと寄り添ってくださる先生の存在は子どもにとっても保護者にとっても本当に心強く、私も日々実践であると思いました。また、日々の記録をとっておくことも自分への反省や成長を感じられることができると学ばせていただきました。

現場で起きている生の声を聞くことができるのは貴重でした。同じ言葉や行動を見たり聞いたりしても、立場によって問題視する程度の違いに驚きました。

不登校、塾、学校現場における事例を伺い、教師が丁寧に子どもや保護者と「教師学」のスキルを活かしながらやり取りを重ねていくことの大切さと、教育現場にもっと「教師学」を知っていただき、子どもを支える連携の輪を広げていけたらいいと、改めて思いました。

教職希望の若い人が減っていると聞きます。そういう傾向に、何か歯止めをかける上での一助になるような、イベントになるといいと思いました。そして、この場に現役教員や学生の参加が増えるように、できることを考えてみたいと思いました。

(文責 教師学事例研究会実行委員会)