■実践例
教師学では児童・生徒理解とともに、子どもたちが教師の気持を理解できるような教師の自己表現を大切であると考えます。ですから、「教師による生徒理解」と「生徒による教師理解」をともに大切にしながら相手に関わる心構えを「教師学マインド」と呼んで強調しています。
自己表現の方法として教師学は「わたしメッセージ」を提案していますが、それには、私の考えや信念を伝える「宣言のわたしメッセージ」、将来満たしたい私の欲求を伝える「予防のわたしメッセージ」、相手の行動に対する私の否定的な感情を伝える「対決のわたしメッセージ」、相手の行動を受け入れている私の肯定的な感情を伝える「肯定のわたしメッセージ」の4種類があります。
最後の「肯定のわたしメッセージ」は、子どもたちとの心の絆を強めていく上でとても効果的なものです。学校では教師は管理者として生徒に「対決」しなければならない場合も多くありますが、それ以上に子どもたちに助けられ、子どもたちの行動を受容する場面も多いのではないでしょうか。そんな時、「君はそのままでいいんだ。私は君を受け入れている」というメッセージを子どもたちに言語化して送ります。「肯定のわたしメッセ−ジ」は相手に大きな影響を与えるメッセージです。以下に紹介するのはその実践例です。
☆依頼事を早速やってきた同僚に(専門学校・埼玉・42才)
(前日、教務担当の同僚ABに資料を渡し、実習指導案を考えておいてほしいと協力を依頼した)
感想
同僚とは少し距離をとっているところがあったが、これをきっかけに、言葉が足りなかった私、1人で抱え込んでイライラしがちな私に気付いた。3人で実習指導をするので、協力し合うムードが盛り上がり、とてもうれしくなった。
☆努力の姿勢が感じられる学生に(専門学校・埼玉・42才)
(いつもは無言で教務室に入ってくるT子が、このところ精一杯という感じで挨拶をしようとしている。今日も日直の仕事が終わり報告に来た)
−次の日のグループワークで−
感想
いつも注意されることの多いT子であるが、本人なりに努力している行動が見られ嬉しく思っていた。お互いに気持が言えて何となくその場のムードがよかった。