親子関係ではその基盤となるものが、たんに「愛情」、または「理解」の片方だけでは本当に健全で温かい家庭の姿を望むことはできません。親と子の両方からの愛情と理解が満たされてはじめて、親と子がともに人間として成長し、生きていくことができるのです。
子どもの心身は、勉学偏重の今日の風潮に押しひしがれています。知性と感情はまるで相互に無関係であるように考えられています。しかし、本当は知性と感情は別個のものではなく、知性は感情を土台にしてのびていくのです。子どもの社会生活での感情が豊かに満たされることで、知性も十全な発達が期待できるのです。
子どもも親もひとりひとりがユニークで独自な存在として、自分なりの欲求と未来への希望をもっています。「子どもだから」、「生徒だから」、また「親だから」といって人間をマス(集団)でとらえて、ひとりひとりの可能性を無視し、発展していく芽をつんでしまってはいないでしょうか。ひとりひとり違った人間として、その素晴らしさを認め、それを育てのばしていくことが、われわれの基本的な立場です。
われわれは、たとえば子どもが学校で何か問題を起こした時に、それは「学校の問題」として切り離して考えがちです。しかし本当に大切なのは、問題を直接の背景の中だけで処理しようとするのではなく、子どもの欲求-家庭-友達-社会といった子どもを取りかこむさまざまな環境の関連性の中で、問題の全体像をつかみ、理解していくことではないでしょうか。そして各々の場所で連携を取りながら、できることをしていくことが、問題に対応する基本的な姿勢でなくてはなりません。